お仕事コラム
年末調整とは?~派遣社員も年末調整できますか?~
14.12.26
年の瀬も近くなり、本年最後のブログ更新となります。
今回は、年末に皆様が頭を悩ませる筆頭と言っても過言ではない「年末調整」について、「超」簡単に解説したいと思います。
「超」簡単なので、具体的な計算方法は、説明致しません!
というのも、筆者も労務事務に携わるまで「年末調整」の「理屈」を知らずにいたのですが、「理屈」を覚えてから年末調整に抵抗がなくなった経験があるからです。 それに、今の世の中、理屈さえ判っていれば、あとはネットですぐ調べられますし。
どうしても、計算方法まで知りたい!自分の分を計算したい!というかたは、国税局のHPから調べてみてください。
■国税局 「平成26年分 年末調整のしかた」
https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/gensen/nencho2014/01.htm
今回は、皆さんに、「年末調整」とは何なのか、どういう仕組みなのかを知っていただくことが一番の解決になると思い、解説させていただきます。
◯年末調整 = 一年間の所得税を確定する作業
年末調整とは、簡単に言うと、「一年間の給与から所得税を計算して、確定させる作業」です。
「超」簡単な解説だと、上の一文で終わりなのですが、さすがにそれでは解説になっていないので、以下もうちょっと解説です。
そもそも、これぐらいのことは、漠然と理解しているかたもいらっしゃるのではないでしょうか?
では、「毎月給料から所得税が引かれているけど、あれはなんなの?」と質問されたら正しく返答できますか?
毎月給料から引かれている所得税は、「ざっくりと計算した前払い分」と理解してください。
所得税額は、一年間の給与だけでなく様々な事情を勘案して計算される性質のものです。でも、一年が終わってから、「じゃあ貴方の所得税は◯◯万円です」と言われて一括で支払うように催促されては困りますよね? 税金を徴収する国からみても未納などが増える原因にもなってしまいます。
そこで、毎月少しずつ「ざっくりと計算した」所得税を「前払い」しておくのです。
そして、一年が終わる段階で、正式に所得税額を計算して、前払いしていた金額と比較して、所得税を還付したり、追加徴収したりするのです。
・「ざっくりとした計算」とは、貴方の収入と貴方が養っている人の数だけを考慮した計算です。これは、毎年会社に提出している「扶養控除等申告書」に基づいて計算されます。
・よく年末調整=お金が返ってくると思っているかたがいますが、「お金が返ってくる場合もあるし、余分に払う場合もある」というのが正しい認識です。
実際は、「お金が返ってくる」ことが多いので、そういう勘違いをされるかたも多いと思います。
「余分に払う場合」がどんな場合かというと、「扶養控除等申告書」にて「誤った申告」をしていた場合です。子どもを養っていると申告していたけど、実績がなかったなどがよくある「誤った申告」です。
◯年末調整の仕組み
=一年間の所得税を確定させる作業の仕組み
所得税を計算するには、貴方が一年間に得た「給与額」のうち「課税所得金額」がいくらになるかを計算します。
算出された「課税所得金額」に5%~33%を掛けあわせて、さらにちょっと差し引いたり、追加したりして、所得税の正しい年額が計算されます。
では、「給与額」のうち、いくらが「課税所得金額」になるのか? そしてその算出方法は?
算出の根底にある考え方は、簡単に言うと、「みんなそれぞれ事情があるだろうから、個々の事情を考慮して決めるよ」というスタンスです。
じゃあ、事情ってなんだ?という話ですが、事情とは下記を指します。
① 給与額の多寡
② 貴方自身の状況(寡婦、寡夫、障害を持っている)
貴方が養っている人の数やその人の状況
各種保険に支払った金額
③ 住宅ローンがあるかどうか
①~③まで番号を振ってある理由は、所得税の年額の算出が3つのステップで構成されていて、それぞれのステップに関わるものをまとめてあるからです。
ちなみに、皆さんがよく聞かれる「控除」という単語は、ここに関係します。一番良く聞かれるのが「扶養控除」という言葉だと思いますが、「貴方が養って(扶養)いる人数に応じて、給与額のうち課税所得金額になる額を減らして(控除)あげますよ」という意味です。
◯年末調整の3ステップ
①給与の多寡による算出
ここでは、給与支払額だけをみて計算します。基本的には、収入が多いほど所得税額が多くなるように計算されます。
このステップで算出された金額は、「給与所得控除後の金額」として源泉徴収票にも記載されます。
ここまでのステップのまとめ
給与 →①給与所得控除後の金額 → 課税所得金額 → 所得税の年額
ちなみに・・・
年収103万円の人の給与所得控除後の金額は、 38万円(年収の36.9%相当)
年収300万円の人の給与所得控除後の金額は、192万円(年収の64.0%相当)
年収400万円の人の給与所得控除後の金額は、266万円(年収の66.5%相当)
②貴方自身やその環境
ここでは、貴方の自身についてや、養っている人について、保険料の支払いなどが考慮されます。
要は、「生活費や先々の保障のために使うお金があるはずなんだから、その分は税金の計算の対象から外すよ」という考え方です。
養っている人なんかいないという人でも、貴方は貴方自身を養っているわけですから必ず何かしらは該当します。
原則的に、養っている人(自分も含め)ひとりあたり38万円が控除されます。
保険料には、給与から支払っている社会保険から、自身で支払っている国民健康保険、生命保険、医療保険、住宅の地震保険等さまざまなものが該当します。
詳しくは、各保険の窓口に問合せてください。質問の仕方は、「この保険は、年末調整のときの控除対象になりますか?」で良いと思います。
ここまでのステップのまとめ
給与 →①給与所得控除後の金額 →②課税所得金額 → 所得税の年額
ちなみに・・・
年収103万円の人の給与所得控除後の金額が38万円
養っている人が一人もいなくても、自分自身を養っているの(「基礎控除」といいます)でその分が控除される
課税所得金額
= 給与所得控除後の金額38万円 - 基礎控除38万円 = 0円
課税所得金額が0円なので、所得税の年額ももちろん「0円」。つまり所得税は払わなくてもいいということです。
これが巷でいう「103万円の壁」です。
年収で103万円を超えると所得税を納める義務が発生してしまうので、103万円を超えないようにしましょうということなのですが、「じゃあ、103万円超えたらどれくらい所得税がかかるのか」まではパッと答えてくれる人は、身近にはいないと思います。
せっかくなので計算してみましょう。
年収110万円
給与所得控除後の金額45万円-基礎控除38万円 =7万円(課税所得金額)
( 7万円×5%(税率) )+ 2.1%(復興特別所得税)
= 約3,500円
年収120万円
給与所得控除後の金額55万円-基礎控除38万円 =17万円(課税所得金額)
( 17万円×5%(税率) )+ 2.1%(復興特別所得税)
= 約8,600円
この所得税額が高いと思われるかどうかは、個人の判断に依るのでなんとも言えませんが、働いた分(給与)以上に税金を納めるということはありません。
また、ご自身の所得税の他に自身が家族の被扶養(養ってもらっている)の場合、その扶養者の税金にも影響します。
年収が103万円を超えると「養ってもらっているとは言えません」ということで「扶養」から外れてしまいます。(現時点では、配偶者の場合、配偶者特別控除といって103万円から141万円の間で段階的に控除額が減っていく制度となっています)
ここからは、扶養者の年収も絡んだり、被扶養者が子か配偶者かによって税額がかわるので検討は割愛します。
また、所得税だけでなく、住民税の100万円の壁、社会保険の130万円の壁もありますので、こちらはまたの機会にします。
③住宅ローンがあるかどうか
あとは、ステップ②までで算出した「課税所得金額」に一定の税率等を掛けあわせて所得税の年額が計算されます。
概ね「課税所得金額」の5%~33%の範囲になるかと思いますが、何度もいうように、ここで具体的な計算方法には触れません。
そうして算出された「所得税の年額」ですが、住宅ローンがある人は、ここからさらに減税されます。
いままでの計算の基本的な考え方に立てば説明不要だと思いますが、「住宅ローンの支払いで大変だろうから、その分所得税を減額してあげるよ」ということです。
ここまでのステップのまとめ
給与 →①給与所得控除後の金額 →②課税所得金額
→③税率計算後、住宅ローン分を減税 → 所得税の年額
これで、正しい所得税の年額が計算されました。あとは、これと今年一年で支払った(前払いした)所得税の差し引きを計算するだけです。
上記の計算は、年末調整として会社が実施してくれますが、皆さんも一度は、ご自身の年末調整を検算されてみてはいかがでしょうか? なにか新しい発見があると思いますよ。
年末調整のついでに「確定申告」もあります。会社勤めのかたはあまり接点がないと思いますが、どんなときに確定申告をしなければいけないのかというのもよくある質問です。
来年時期が近くなったらまた解説したいと思います。
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